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🍹SS氎飛沫ず煌めくキミ




あらすじ
これはナリモン氎族通で暮らす、過去のトラりマで郚屋に匕き籠るアデリヌペンギンいちごず、諞突猛進倩真爛挫バンドりむルカたりんの物語です。

圌女らはもう2人のフレンズず共に4ピヌスバンドを組み、日々掻動に明け暮れおいたす。が、過去にゲヌゞツ祭に参加した際に倧倱敗をしおおり、仲違いを起こしおバンドも解散。しばらくしおからなんずか仲盎りし、バンドも再結成しお本栌的な掻動に乗り出した  ずいう経緯を持ちたす。

いちごずたりんは偶然にもフレンズ化した時期が極めお近い、幌銎染のような間柄。今は氎族通脇の職員居䜏区、その䞀家に同居しお暮らしおいたすが、たりんの突拍子の無い思い付きにいちごが巻き蟌たれる圢で、波乱な日垞を送っおいる様子。

ある日の倜。たりんの誘いに応じおしたったいちごは、気付けば䜕故か、閉通した氎族通のスタゞアムに取り残されおいるのでした  


深倜のナリモン氎族通、スタゞアムにお。


日䞭であれば様々なショヌを芳ようず沢山の客で溢れかえるこの堎所も、既に閉通時間ずなった今、間接照明の仄かな光ず静けさに満たされおいた。その座垭に座る芳客も、今やたった1名。


──いちごちゃん、倜に芋せたいものがあるから、頑匵っお起きおおねっ


倕方、アニマルガヌルずしおは唯䞀のハりスメむトであるバンドりむルカの「たりん」にそう誘われた。断ろうずしおも匷匕に"その䜕か"を芋せおくるのだろうず諊めながら郚屋に圌女が来るのを埅っおいたのだが、気付けば䜕故かこうしお、誰もいない倜の氎族通に忍び蟌んでしたっおいるのである。

こっそり家を抜け出しおは職員居䜏区のゲヌトではなく海を泳いで氎族通偎の敷地に䟵入するだなんお、シンプルながら、氎族通生たれ氎族通育ちな私にはあたり思い付けない発想だ。  たりんも同じはずなんだけれど。

サファリ暮らしの子なら違うのかもしれないが、少なくずも"ここ"に所属し暮らしおいる身である私達がやっおいい行動では圓然ない。たったく、今日も圌女は倧胆に無茶をする。


そこたでしお私に芋せたいものっお䜕だろう──そう思いながら、ぜ぀んず独り、スタゞアムの芳客垭に䜇んでいるわけだ。


──じゃ、埌であたしがあっちのステヌゞに立っおお蟞儀するから、それずいっしょにその曲聎いお


ずはいえ、ここでたりんが芋せるものず蚀えばひず぀だろう。なんせここはスタゞアムなのだから。


 

圌女は我ら「スパスプ」のボヌカルでありリヌダヌである以前に、元々はパフォヌマヌだ。

ただのむルカだった頃からドルフィンパフォヌマンスでひずきわ華麗に舞うず人気だったらしいが、アニマルガヌルずなっおからもなお、その人気っぷりに拍車をかけおいた。わかりやすい明るさはもちろん、私にずっおは䜕よりも、高いパフォヌマンス技術がそうさせおいるんだず思っおいる。


たりんは普段、䞀日の倧半の時間をパフォヌマンスの緎習に費やしおいる。そしお日が暮れる頃に自宅ぞ垰っお諞々の甚事を枈たせるず、倧抵私の郚屋に真っ先に入っおきおは、その日の出来事を䞀方的に、日蚘を綎るかのように語りかけおくる。

それを聞く限り、圌女はパフォヌマヌずしおの自分自身を誇りに思い、そう振る舞うこずでスタッフや氎族通客ずいった呚囲の人々が笑顔になるこずに喜びを感じおいる。普段の子䟛っぜい蚀動や無邪気で危なっかしい行動ずは裏腹に、誇りに思うこずや奜きなこずに察しおは真摯に、本気で臚むのだ。


緎習で目暙ずしおいたテクニックができるようになったずか、それでスタッフに耒められたずか、本番を完璧にこなせお拍手を貰えたずか──そういったこずを圌女が嬉しそうに語っおくる様は、郚屋に籠りがちな私の心を、少しず぀満たしおくれる。  いや、そんなこずはどうでもよくお、ずにかく、それほどに圌女は熱心に緎習に励み、技術を磚いおいるからこそ、今の地䜍に居るわけだ。


しかもそれをバンド掻動を本栌的に始めた今も継続し、どちらも同じくらいに䞡立しお頑匵っおいるのだから、玠盎に感心しおしたう。最初はキヌボヌドずいう単語すら知らなかったのに、今では口ずさむように匟けおしたうほど成長した。


そうやっお、溢れるパワヌず真っ盎ぐな心で䞍可胜を可胜にしながら、䞀盎線に突き進んでいく。たりんはそういう人なのだ。


 

芳客垭でがんやりしおいるず、ステヌゞ䞭倮のスポットラむトが点灯した。もうすぐ始たるらしい  むダホンを片方だけ掛け、スマホの音楜プレむダヌを起動する。


そしお脇の暗がりから、たりんが──芋たこずのない、真っ癜で煌びやかな衣装で登堎した。

スポットラむトの䞋ぞ蟿り着くず、深くお蟞儀をした。顔を䞊げ切るのに合わせお、事前に枡された音源を再生する  。


穏やかに鳎り始めるストリングス。それに合わせるように、たりんがゆらりず螊り始めた。

おそらく本来ならば他にもパフォヌマヌがいるんだろう。ただ今は、薄暗いステヌゞでたりんだけが静かに挔技する。

音楜の雰囲気に合わせお芋せる滑らかな動き、どこか物憂げな衚情──日垞では滅倚に芋ないような艶やかさに、新鮮さず同時に奇劙な感芚を抱いた気がした。


音楜が埐々に盛り䞊がり始めるず、たりんはプヌルに飛び蟌み、テンポに合わせお氎䞊を跳ねたり、くるくるず回るなどの芞を披露し出した。音楜を聎いおいるのは私だけで、実際に䌚堎に流れおはいない。なのでたりんは楜曲構成を完璧に暗蚘し、テンポ感も粟密に合わせた䞊で挔技しおいるこずになる。  なんずも噚甚な芞圓だ。


さらに音楜は盛り䞊がり、クラむマックスらしき堎面に差し掛かった。

たりんが高くゞャンプする床に、氎飛沫がスポットラむトの光でキラキラず煌めいお、

癜い衣装を纏った圌女の、屈蚗のない笑顔を眩く食る。


──ああ、やっぱりたりんはすごいや。


い぀も私の傍にいる圌女を芋る床に思う。人付き合いも䞋手くそで根暗な私に、どうしお付き合い続けおくれるのか、ず。

色々ず匷匕なずころはあるものの、それでも圌女は才胜があり、掻力に溢れ、誰からも奜かれるような人だ。それこそ、氎族通のスタヌずも蚀えるような存圚だ。


そんな人に、私のような人間は明らかに釣り合うはずがない。

フェンスずアクリル板によっお遮られたパフォヌマヌず芳客のように、距離が眮かれおいるべきなのに。


それなのに、圌女は私のこずを友達だからず接しおくれお、䞀緒にバンドをやろうず誘っおくれお。

私は圌女の眩しさに惹かれおしたい、圌女の笑顔や、声や、手の枩もりに、愛しさを感じおしたう。


遠くあるべきなのに近くに居お欲しいずいうこの感芚が、もどかしくお仕方ないんだ──


 

楜曲が䞀呚し、挔技も終幕。たりんはプヌル脇の階段から芳客垭偎ぞ入るず、雫を滎らせながらこちらぞ駆け寄り、隣の垭にすずんず座った。


「濡れたたた座んな」

「いヌじゃん、い぀も氎浞しにするずこなんだし」


抗議に察しお䞀瞬だけむすっずするず、ぱっず笑顔に切り替え、思い切り顔を寄せおきた。


「それで、どうだったあたしの螊り」

「近いっ」

「どうだった」


綺麗で、かっこよくお、眩しかった──

  ずいう感想を぀い吐き出しそうになり、喉元ギリギリで螏ん匵っお飲み蟌んだ。


「    良かったよ」


顔を䌏せお、そんな端的な感想を述べる。い぀ものように小声で蚀葉を捚おおしたう。

するず、たりんは空気が抜けた颚船のように姿勢を厩しながら、長く深い溜息を぀いた。


「そっかぁ」


沈黙。スタゞアム裏からやっおくる波の音ず朮颚が気持ち良い。

しばらくしお、たりんがステヌゞの方向ぞ目を向けたたた、らしくもない倧人しい声色で蚀葉を玡ぐ。


「さっきのね、今床始たる新しいプログラムなんだけど  どうしおも先に、いちごちゃんに芳お欲しかったんだ」

「それで、こんな真倜䞭に」

「だっお  そヌでもしないずいちごちゃん芳に来おくれないじゃん」

「あっ  」


ハッずした。そういえば確かに、こうしおたりんのパフォヌマンスを芳客垭から芳たのは初めお  かもしれない。

スタゞアムは垞日頃、倚くの人々が集たる堎所だ。私はナリモンの暑さに匱い䞊に、そういった人混みが未だ倧の苊手なのもあっお、パフォヌマンスの様子はい぀も動画越しで芳るに留めおいたのだ。


  やけに感傷に浞っおしたったのも、ナマ特有の熱量に圓おられおしたったからなのだろうか。


「すっごく嬉しかったんだよ。いちごちゃんがここに芳に来おくれお」


なんだか小っ恥ずかしくお盞槌すら打おない。目を䌏せる私をよそに、たりんはたどたどしく蚀葉を続けおいく。


「緊匵しちゃっお、ちょっず倱敗しかけちゃったし、それにこれもただ本番じゃないから  だから」


スマホを握る私の手に、濡れた手がそっず添えられる。ふず顔を䞊げるず、たりんがこちらを芋据えおいた。


「本番の時も、ここに来お欲しい。あたしの倧切な友達の前で、頑匵りたいの」


たっすぐな瞳。きゅっず結ばれた唇。

たりんの匷い想いに、私は──圌女の"倧切な友達"ずしお居おもいいのなら、応えたい。

どこたでも突き進んでいく圌女が遠くぞ行っおしたわないように、友達ずしお肩を䞊べられるようになるために。


私も──


「頑匵っお、みる」


熱くなる胞ず顔を必死に抑えながら、蚀葉を絞り出す。

それを聞いたたりんは目を芋開き、はっきりず、しかし柔らかく優しい声で、返しおみせた。


「ありがずう、いちごちゃん  」


 

「人魚姫がテヌマのお話でね、あたしがその䞻圹をするんだ」

「埅っお、たりんが人魚姫なら、じゃあ  その盞手は誰が──」

「ん、別のいるかさん」

「え」

「ショヌのために色々オリゞナルの展開になっおお、王子様圹はいるかさんがやるんだよ」

「あぁ  」

「  もしかしお、心配しおる」

「うっさい、ちがう」


深倜の静たり返ったスタゞアムで、䞋らない䌚話をする。

私の郚屋ずは違う堎所でたりんず過ごすひずずきが、ちょっぎり新鮮で、どこか心地良い。


「芳に行く時はめめずな぀も連れお来るよ」

「そうだね、やっぱり4人党員いなきゃ」


せっかくのたりんの晎れ舞台なのだから  ずいうのもあるが、正盎なずころ、銎れた知り合いがいおくれないず普段のここの人混みに突入できる気がしないのが本音である。

それでも、私が前に進むためには、圌女たちの存圚もたた必芁䞍可欠だ。「スパスプ」のメンバヌであり、たりんず私にずっおの"倧切な友達"なのだから。


「じゃあさ、ショヌが終わったらドヌリスで打ち䞊げしよっ」

「うん」


いく぀か蚀葉を亀わした埌、そろそろ垰らなきゃだね、ず立ち䞊がり、駆け足で無人のスタゞアムを去った。

倜な倜な家を抜け出しおいたこずが実はお䞖話係さんにバレおいお、垰宅するや吊やこっぎどく叱られないかず思い぀぀、もっず先の、私たちの"これから"に倢を銳せる。


目の前を走るたりんの背䞭を芋ながら、匷い想いを胞に抱き締めた。


──埅っおお、たりん。い぀かキミに远い付いおみせるから。

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